2021年4月15日
野球肘について
こんにちは!
中村接骨院の院長中村です!
当院にも多くの野球部の子達、社会人野球の方が来院されています。
今回は、とても多い‘‘野球肘‘‘について書かせてもらいます!
野球肘とは簡単に説明すると、ボールを投げることによって肘の内側に痛みが出る障害のことを言います。
細かく言うと、野球肘には
・内側型
・外側型
・後方型
という3タイプがあります💡
一般的に言われているのが、内側型の痛みで靭帯の障害によるものです。
今回は内側型にしぼって話を進めていきます!
まず、年齢によって痛める場所が変わってきます。
それは成長にともない、弱い場所が変わっていく為です。
肘の内側の構造をみていきましょう👀
上記の通り、靭帯の線維は3つあります。
その中でも前斜走線維を損傷します。
小学生~中学2年生くらいまでは靭帯よりも上腕骨の方が弱くて、ここを痛めます。
上腕骨内側上顆(靭帯付着部)の軟骨損傷や軟骨下骨損傷が起こります💦
エコーやレントゲンでみると軟骨や骨が剥離しているのを確認できます。
中学3年生から高校1年生にかけては、上腕骨が強くなり、尺骨側の付着部が弱い部分となります。
上腕骨内側上顆と同じような損傷が起きます。
それ以上の年齢になると骨化が完了して、靭帯を損傷します。
損傷の度合いは様々で、靭帯線維の炎症、微小断裂、部分断裂などなど...
投げる動作で痛める理由としましては
この図のように、内側に牽引力が加わることで起こります。
なので、一回で怪我をするというよりは
繰り返しの外力の刺激によって痛めます。
・投球過多
・不良なフォーム
・身体の機能が投球動作に見合っていない(機能が低い)
・コンディション不良
など、様々なことが考えられます。
メディアでは球数制限のことがよく言われていますが、
球数を制限することも必要ですが、成長期でしっかりとしたサポートをすることが一番重要と考えます。
当院がよく聞くのが...
『アップがほとんどない』
原因としては練習時間が短いから
ここはとても難しい現場の問題だと思います。
しかし、子ども達のスポーツ障害を減らし、少しでも怪我無く競技を行うには
日々のアップ、コンディショニング、ケアがとても重要となります。
そこで当院では、治療で痛みが無くなってまた痛めない為に
セルフケア指導と身体の使い方の指導もさせて頂いています。
正直な話をすると
大学、社会人、プロでは靭帯がほぼない状態やボロボロな状態でも全く痛み無く競技生活を送れている選手もたくさんいるんです。
もちろん、組織が正常であることにことしたことありませんが
痛みでプレーを諦めないこと、しっかりとプレーができる可能性があること
それを証明してくれています。
当院の治療コンセプトとしては
『今』と『未来』の両方を考えた上でベストな選択をし、
その選択に合わせて治療を組み立てて対応させて頂いています。
野球肘について全国医学会で論文発表もさせて頂きました!
論文発表の一部を掲載させて頂きます。
野球肘のエコーと可動域制限へのアプローチ
宮崎県 中村 拓未
【はじめに】
当院では野球選手の来院が多く肘関節内側部痛に遭遇する頻度が高い。そのほとんどが投球時に肘関節に外反ストレスが繰り返しかかることにより発症する。中には投球の瞬間にて発症するケースもある。
前述したように野球肘の治療に携わることが多く臨床を経験していく中でエコー上の変化と症状の変化が一致しない症例が多く見受けられた。
繰り返しの外反ストレスにより肘内側部への器質的変化が起こっていると考え、画像での変化が少なく、他の関節機能を高めることにより肘内側部への外反ストレスの軽減が症状の変化に関係すると考えた。
そこで投球で発症した肘関節内側側副靭帯(以下UCLと記載する。)損傷においてエコーによる局所状態の観察と可動域を調べエコー上の変化と各可動域に対する制限にて検証した。
【対象】
平成29年5月18日~平成30年6月13日までの間に野球による肘関節内側部痛を訴え、病院や整形外科にて野球肘と診断され当院に来院された14歳~17歳の患者10名(男性10名 平均年齢15.7歳)を対象とした。
【結果】
エコー画像所見の結果と疼痛の有無が一致しなかった。
エコー観察においては症状が改善した全症例に健患側差を認めた。靭帯のフィブリラパターンの不正像残存、内側上顆や尺骨鉤状突起結節の骨不正像残存があった。
全症例にて投球側の各関節可動域が非投球側より低下が認められた。投球動作に対する機能低下を示唆する結果となった。
全症例にて各可動域の低下を改善することにより、10名中7名が疼痛消失、2名が症状軽減(塁間距離まで疼痛消失)、1名が継続加療できず不明といった結果になった。
整形外科にて上腕骨内側上顆部の裂離骨折の診断があった3名中3名が画像所見では骨片が残存するも疼痛無く同じ競技レベルに復帰をしている。
可動域制限が非投球側と比較し特に制限が強かった部位は肩関節7名、肘関節3名という結果だった。
【考察】
エコー観察において初検時と投球復帰時において明確には画像所見に差が見られないにもかかわらず疼痛の減少が見られ、エコー画像だけでの疼痛に対する評価はできなかったが、エコーで局所状態を把握しながら、身体機能や投球時の痛みに注目して競技復帰させることが可能であると示唆された。
投球動作に対する肘関節内側部にかかる負荷は、制限のあった上肢帯の関節可動域を高めることによって軽減させることが可能である。画像所見では組織の不正像が残存していても投球時の疼痛改善は十分可能である。
投球動作の肩最大外旋位における肩複合体の各関節角度から³⁾、肩甲上腕関節が肩最大外旋時の可動域に大きく影響し肘関節外反ストレスも肩最大外旋時に最も大きく、肩甲上腕関節の外旋可動域が広がり、肘関節外反ストレスが軽減したと示唆された。
円回内筋、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋が肘に最も外反ストレスが加わる投球相において適切に機能することはUCLに加わる外反ストレスを減少させることから⁴⁾、円回内筋および屈筋群による肘関節や手関節可動域制限を改善したことにより、投球時の疼痛軽減に繋がったと推察される。これにより、上肢帯の可動域低下を起こしたまま繰り返し投球動作を行うことでUCL損傷を引き起こすことが示唆された。
画像検査上、UCLの走行がほとんど確認できないにも関わらず痛み無く投球可能な選手の報告もあり⁵⁾、こういった事実や今回の症例から画像変化だけでなく機能など総合的にとらえて判断することが必要な分野である。
投球動作は今回注目した上肢の機能だけでなく下肢からの運動連鎖によって出来る動作であるので、今後は上肢のみでなく体幹、下肢なども含めて検討していきたい。
【まとめ】
内側型野球肘のエコー観察のみは現段階では疼痛に対する明確な評価はできないことが示唆された。
今回、全症例にて投球側の上肢帯の可動域低下が認められており、その機能を改善することにより症状改善することが出来た。